財産分与の対象にならない「特有財産」とは──家の頭金・相続・贈与の見分け方

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先に結論をお伝えします。

財産分与では、婚姻前から持っていた財産や、相続・贈与で得た財産(=特有財産)は、分ける対象になりません。問題になりやすいのが、家の頭金に「特有財産」が使われていたケース。たとえば親からの贈与や婚前の貯金を頭金に充てていた場合、その分は分与の計算で考慮されることがあります。見分けの鍵は「いつ・どこから来たお金か」を証明できる資料です。私は買取・査定側の立場から、家にまつわる特有財産の考え方を、どちらの立場にも立たずに整理します(具体的な計算・線引きは弁護士の領域です)。

「この家の頭金、私の親が出してくれたんだけど……それも半分こになるの?」——財産分与でよく出る疑問です。すべてを2分の1にするわけではありません。まず「分けないお金」の考え方を押さえましょう。(財産分与の基本は「財産分与「2分の1ルール」」にまとめています。)

特有財産とは──「分けなくていい財産」

財産分与の対象は、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産です。逆に、次のような財産は特有財産として、原則、分与の対象になりません。

  • 婚姻前から持っていた財産(結婚前の預貯金・不動産など)
  • 相続で得た財産(親から相続した実家・預金など)
  • 贈与で得た財産(親からの資金援助など)

いちばんもめるのは「頭金に特有財産が入っている家」

家の売却が絡む離婚で問題になりやすいのが、この論点です。モデルケースで整理します。

・家の購入時、頭金500万円のうち300万円は妻の親からの贈与
・残りは夫婦の預金+住宅ローン
 → この300万円分は「特有財産」として、分与で考慮されることがある

家という一つの財産の中に、「夫婦で築いた部分」と「特有財産の部分」が混ざっている——だから単純に半分にはできません。どう反映するかは計算が複雑になるため、具体的な取り決めは弁護士にご相談ください。当サイトは「こういう論点がある」という枠組みをお伝えします。

離婚に伴う家の売却は、当サイト運営の城久株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第114307号)が、条件に合う物件を買い取っています(取引態様:当社が契約の当事者となる売買(直接買取))。買取の相談ができる物件か確認する

見分けの鍵は「資料で証明できるか」

特有財産だと主張するには、そのお金が「いつ・どこから来たか」を示す資料が要ります。口頭の記憶だけでは通りにくいのが実務です。

  • 贈与なら:振込の記録・贈与契約書・通帳の履歴
  • 婚前の貯金なら:結婚前の残高がわかる通帳
  • 相続なら:遺産分割協議書・相続の記録

時間が経つほど資料は集めにくくなります。「特有財産があるかも」と思ったら、早めに手元の記録を整理しておきましょう。

その前に、家の「今の価値」を把握する

特有財産の話も、結局は「家が今いくらか」が土台になります。価値がわからないと、どの部分をどう分けるかの計算も始められません。中立な複数社の査定で、まず価格を押さえておきましょう。

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「特有財産だ」と示す資料は、どこで・いくらで手に入るか

特有財産の主張は、結局「資料が揃っているか」で決まります。手元にないものも、多くは取り直せます。どこに請求すればよいかを整理しました。

示したいこと 資料 入手先・費用の目安
家の名義・持分・購入時期 登記事項証明書 法務局。書面請求600円、オンライン請求で郵送520円・窓口交付490円(令和7年4月1日以降)
親からの頭金の贈与 振込の記録、贈与契約書、贈与税の申告書の控え 手元の控え。金融機関の取引履歴は取引先の金融機関へ(保存期間・手数料は金融機関により異なる)
婚姻前からの貯金 結婚した時点の残高がわかる通帳・取引明細 同上。結婚から年数が経っているほど遡れないことがある
相続で得た財産 遺産分割協議書、被相続人の戸籍、相続税の申告書の控え 手元の控え。戸籍は市区町村の窓口
購入時の資金の内訳 売買契約書、重要事項説明書、住宅ローンの契約書、精算書 手元の控え。ローン関係は借入先の金融機関

特に見落とされやすいのが贈与税の申告書の控えです。親から住宅の頭金の援助を受けたとき、住宅取得等資金の贈与の非課税(省エネ等住宅は1,000万円まで、それ以外は500万円まで/令和6年1月1日から令和8年12月31日までの贈与)を使っていれば、贈与税が0円でも申告書を出しているはずです。その控えは「誰から・いつ・いくら・何のために」が一枚でわかる資料になります。再取得の方法は税務署または税理士にご確認ください。

期限は「離婚から5年」──2026年4月1日で変わりました

財産分与は、離婚したあとでも請求できます。ただし期限があり、2026年(令和8年)4月1日の改正で2年から5年に延びました。どちらが適用されるかは、離婚した日で決まります。

離婚した日 家庭裁判所に申し立てできる期間
2026年4月1日以降 離婚した日の翌日から5年
2026年3月31日以前 従来どおり2年

期間が過ぎると申し立てそのものができなくなります。2026年3月31日以前に離婚した方は2年のままなので、延びたと思って構えていると間に合わないことがあります。

協議でまとまらない場合の受け皿は、財産分与請求調停です。申立先は相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定めた家庭裁判所。費用は収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手(金額は裁判所ごとに異なります)。裁判所が案内している主な書類は次のとおりです。

財産分与請求調停で求められる主な書類

・申立書およびその写し1通
・離婚時の夫婦の戸籍謄本(除籍の記載があるもの)
・夫婦の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、預貯金通帳の写しなど)
・事情説明書(財産分与)
・進行に関する照会回答書
・送達場所等届出書

「夫婦の財産に関する資料」に不動産の登記事項証明書が挙がっている点に注目してください。家がある離婚では、話し合いの段階から資料として必要になります。手続きの進め方や書類の書き方は、弁護士にご相談ください。

立場で準備が変わる──主張する側と、争われる側

民法762条は、1項で婚姻前からの財産と婚姻中に自分の名で得た財産を特有財産とし、2項で「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は共有に属するものと推定する」と定めています(条文はe-Gov法令検索で確認できます)。つまりわからないものは共有側に寄るため、特有財産だと言う側が資料を出す立場になります。

立場 先に用意しておくもの つまずきやすいところ
特有財産だと主張する側 お金の出どころから家の購入までが線でつながる記録 「親が出してくれた」という記憶だけでは資料にならない。時間が経つと取引履歴を遡れなくなる
それに反論する側 購入時の資金の内訳、ローンの返済を誰の収入で続けてきたかの記録 相手の主張額をそのまま前提にしてしまう。返済の負担は別に評価される論点

もう一つ、意外ともつれるのが「贈与なのか、貸したお金なのか」です。親からの頭金が贈与なら特有財産の主張につながりますが、返す約束のある借入なら家の負債という別の話になります。当時どちらの整理だったのかを示す資料(贈与契約書、借用書、返済の記録、贈与税の申告の有無)を先に確かめておくと、話が空回りしません。

モデルケースで考える

購入価格4,000万円のうち、頭金600万円を妻の親からの贈与、残り3,400万円を夫名義の住宅ローンで組んだとします。このとき論点は「600万円が贈与だと資料で示せるか」と「3,400万円の返済を誰の収入で続けてきたか」の二つに分かれます。どちらも金額そのものより、示せる記録があるかで結論が動きます。実際にどう反映するかは事案により異なるため、計算や取り決めは弁護士にご確認ください。

なお、特有財産の話に入る前提として、家そのものの評価額が必要になります。一般論として、不動産会社に買い手を探してもらう「仲介」と、不動産会社が直接買い取る「買取」では、想定される価格や引き渡しまでの期間が変わります。どちらの前提で話しているのかを揃えておくと、協議が空回りしにくくなります。

次にやること(チェックリスト)

☐ 家の頭金や資金に婚前・相続・贈与のお金が入っていないか思い出す
☐ その証明資料(通帳・振込記録・契約書)を早めに集める
☐ 家の今の価値を査定で把握する
☐ 特有財産の反映・計算は弁護士に相談する

よくある質問(FAQ)

Q. 親が出してくれた頭金は、返ってきますか?
その頭金が贈与などの特有財産にあたり、資料で証明できれば、分与の計算で考慮されることがあります。ただし扱いは個別事情によるため、弁護士にご確認ください。

Q. 証明する資料がありません。それでも主張できますか?
資料がないと、特有財産だと認められにくいのが実務です。通帳の履歴など、間接的にでも示せる記録がないか探してみてください。判断は弁護士へ。

Q. 婚姻中に買った家は、全部が分与の対象ですか?
原則は対象ですが、頭金などに特有財産が混ざっている場合は、その部分が考慮されることがあります。単純な2分の1にならないケースもあります。

Q. 離婚してから3年経っています。今から財産分与を請求できますか?
離婚した日で変わります。2026年4月1日以降に離婚した場合は離婚した日の翌日から5年なので、まだ期間内です。一方、2026年3月31日以前に離婚した場合は従来どおり2年のため、すでに期間が過ぎている可能性があります。3年前の離婚であれば2年のほうが適用される時期にあたります。ご自身のケースで請求できるかは、弁護士にご確認ください。

Q. 婚姻前から自分が持っていた家を、結婚後に夫婦のお金でリフォームしました。どう扱われますか?
家そのものは婚姻前からの特有財産にあたりますが、婚姻中に夫婦の協力で価値を維持・向上させた部分については別に評価される論点があります。リフォームの契約書・見積書・支払いの記録を残しておくと、話の前提が揃います。どう反映するかは事案により異なるため、弁護士にご相談ください。

Q. 婚姻前の貯金を、結婚後に生活用の口座へ移してしまいました。もう特有財産だと言えませんか?
言えなくなるとは限りませんが、日常の入出金と混ざるほど「どのお金が婚姻前の分か」を追いにくくなります。民法762条2項は、夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は共有に属するものと推定すると定めているため、追えないものは共有側に寄ります。結婚した時点の残高がわかる明細と、その後の大きな入出金の記録から遡れないか確認してみてください。

この記事について:離婚の味方 編集部(城久株式会社/宅地建物取引業 東京都知事(1)第114307号)が作成しています。不動産の実務に関する記述は、当社の宅地建物取引士が確認しています。

財産分与の取り決めは弁護士に、税金は税理士にご確認ください。 最終更新日:2026年9月25日

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