熟年離婚と持ち家──退職金・年金分割まで絡む財産分与の全体像

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熟年離婚では、持ち家が”人生最大の分けもの”になります。しかも、退職金と年金まで絡む。

長年連れ添った分、築いた財産も大きい。持ち家・退職金・年金——どれも分け方を間違えると、老後の生活設計が崩れます。落ち着いて、順に押さえましょう。

結論(先にお答えします)。

熟年離婚では、財産分与の中心が持ち家になりがちです。長い婚姻期間で住宅ローンを完済済みのことが多く、その場合は売って現金で分けやすいのが特徴。加えて、退職金も婚姻期間に対応する部分は財産分与の対象になり得ます。さらに、年金分割(婚姻期間中の厚生年金の記録を分ける制度)は財産分与とは別の手続きで、2026年4月1日以降の離婚なら離婚から5年以内(それより前の離婚は2年以内)に請求が必要です。老後の生活が直結するため、「今の家をどうするか(売る/住み続ける)」と「退職金・年金をどう分けるか」を、あわてず一体で考えることが大切です。分与の割合・年金分割は弁護士・専門家に、税金は税理士にご相談ください。

熟年離婚は、若い世代の離婚とは”分けるものの重さ”が違います。持ち家を軸に、特有のポイントを見ていきましょう。(財産分与の基本は「財産分与「2分の1ルール」」にまとめています。)

熟年離婚・持ち家の特徴

【現場から】 長い婚姻期間を経た持ち家には、次の傾向があります。

  • 住宅ローンが完済済みのことが多い:残債がなければ、売却代金をそのまま分けやすく、換価分割と相性が良い
  • 建物は古く、価値の中心は土地:築年数が進み、戸建てなら土地値が中心になることも(→「戸建てを財産分与で分ける」)
  • 「老後の住まい」を同時に考える必要:売って住み替えるか、一方が住み続けるか。年齢的に新規ローンが組みにくい点も考慮

持ち家だけじゃない:退職金と年金分割

対象 扱い
退職金 婚姻期間に対応する部分は財産分与の対象になり得る(既に受給・近く受給が見込まれる場合など、扱いは事情による)
年金分割 婚姻期間中の厚生年金の記録を分ける別制度。2026年4月1日以降の離婚なら離婚から5年以内(それより前の離婚は2年以内)に請求が必要

例えば、住宅ローン完済の持ち家を売って現金で分け、退職金の一部も分与の対象として整理し、年金分割の手続きも並行する——というのが熟年離婚の典型的な全体像です。項目が多いので、「家・退職金・年金」を一枚の紙に書き出して整理すると、抜け漏れを防げます。割合や年金分割の具体は、弁護士・年金事務所にご確認ください。

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【2026年4月改正】財産分与と年金分割の請求期限が5年に延びました

民法などの改正により、2026年4月1日以降に離婚した場合、財産分与と年金分割の請求期限は離婚から2年→5年に延長されています。それより前に離婚した場合は、経過措置により従来どおり2年です。

離婚した日 財産分与の請求 年金分割の請求
2026年3月31日まで 離婚から2年以内 原則 離婚から2年以内
2026年4月1日以降 離婚から5年以内 原則 離婚から5年以内

【買取の現場から】 ただし、期限が延びたことを「後回しにしてよい」と読むのは危険です。時間が経つと、家の価値は動き、相手の預金は使われ、退職金は生活費に消えます。分けるはずだった財産そのものが減っていきます。熟年離婚では特に、相手が年金生活に入って取り崩しが始まると、請求できても回収が難しくなります。期限は「最後の締め切り」であって、「動き始める時期」ではありません。

熟年離婚の持ち家は「老後の住まい」から逆算します

【買取の現場から】 若い世代の離婚と決定的に違うのは、家を手放したあとに新しい住まいを確保しにくいことです。ここを先に考えないと、分け方の選択を誤ります。

選び方 熟年離婚で起きやすいこと 先に確かめること
売って現金で分ける 二人とも住み替えが必要。60代以上の単身は賃貸の入居審査が通りにくいことがある 売る前に、次の住まいの目処を立てておく
一方が住み続け、代償金を払う 年齢的に新規ローンは組みにくく、代償金は退職金などの現金で払うことが多い。「家はあるが現金がない」老後になりやすい 代償金を払った後の手元資金で、固定資産税・修繕・生活費が回るか
リースバック 売って現金化しつつ同じ家に住める。ただし家賃が年金生活を圧迫することがある 家賃を年金収入で払い続けられるか、契約形態(定期借家か)

特に2つ目は見落とされがちです。家を取ることは、現金を諦めることです。持ち家は住む場所になりますが、医療費や介護費には換えられません。「住み慣れた家に残りたい」という気持ちと、10年後・20年後の手元資金を、同じ紙の上で比べてください。

退職金の分け方──よく使われる考え方

退職金は、婚姻期間(同居期間)に対応する部分が財産分与の対象になり得ます。よく使われる考え方は次のとおりです。

考え方の例

退職金 × (婚姻中の同居期間 ÷ 勤続期間)× 2分の1

例:退職金2,000万円、勤続38年、そのうち婚姻期間30年
→ 2,000万円 × 30/38 ≒ 1,579万円(婚姻期間に対応する部分)
→ その2分の1 ≒ 約789万円

※あくまで考え方の一例です。すでに受け取ったか、将来受け取る見込みか、勤務先の制度などによって扱いは変わります。具体的な計算は弁護士にご確認ください。

実務では、家と退職金を相殺する形がよくあります。「家は妻が取る、その代わり夫の退職金の分与は受けない」といった整理です。このとき、家の価値をいくらと見るかで、相殺が公平かどうかが決まります。家の査定額が、退職金と釣り合う物差しになるわけです。ここで家を安く見積もられると、家を取る側が得をし、退職金を渡さない側が損をします。複数社の査定で価格帯を押さえておく意味はここにあります。

税金で見落としやすい点

  • 財産分与で財産を受け取った側には、原則として贈与税はかかりません(分与額が過大な場合などを除く)
  • 不動産を渡した側には、譲渡所得税がかかる場合があります。財産分与で不動産を渡すと、税務上は「その時の時価で譲渡した」と扱われるためです。買った時より値上がりしている土地を渡すと、現金を受け取っていないのに税金が発生することがあります
  • 居住用の家を売る場合は3,000万円の特別控除が使えることがありますが、配偶者への譲渡には使えず、離婚成立の前後で扱いが変わります

2つ目は、長年住んだ土地ほど値上がりしていることが多い熟年離婚で、特に起きやすい落とし穴です。家を渡す前に税理士に確認してください。

次にやること(チェックリスト)

☐ 持ち家の今の価値と残債(完済済みか)を確認する
☐ 退職金のうち婚姻期間対応分が分与対象か確認する
☐ 年金分割を検討する(2026年4月1日以降の離婚は5年以内、それより前は2年以内に請求)
☐ 「家・退職金・年金」を一枚に書き出して全体を整理する
☐ 割合・年金分割は弁護士・年金事務所、税金は税理士に相談する

よくある質問(FAQ)

Q. 退職金も財産分与の対象になりますか?
婚姻期間に対応する部分は対象になり得ます。ただし、既に受給済みか、将来の受給が確実かなど、事情によって扱いが変わるため、弁護士にご確認ください。

Q. 年金分割はいつまでにすればいいですか?
2026年4月1日以降に離婚した場合は、原則として離婚から5年以内に請求が必要です(それより前の離婚は2年以内)。期限を過ぎると分割を求められなくなることがあるため、早めに年金事務所に相談してください。

Q. 2026年4月より前に離婚しました。期限は5年ですか?
いいえ。2026年3月31日までに離婚した場合は、経過措置により従来どおり財産分与・年金分割とも原則2年です。5年になるのは2026年4月1日以降に離婚した場合です。ご自身の離婚日で必ず確認してください。

Q. 家を取って住み続けたいのですが、老後資金が心配です。
家を取る代わりに代償金を払ったり、退職金の分与を受けなかったりすると、手元の現金が大きく減ります。代償金を払った後の預金で、固定資産税・修繕費・生活費が何年回るかを先に計算してください。足りない場合は、売って分ける、またはリースバックで現金化しながら住み続ける方法と比べる価値があります。

Q. 退職金をまだ受け取っていません。それでも分与の対象になりますか?
将来受け取る見込みが高い場合(定年が近いなど)は、対象として扱われることがあります。受け取る時期や勤務先の制度によって判断が変わるため、弁護士にご確認ください。

この記事について:離婚の味方 編集部(城久株式会社/宅地建物取引業 東京都知事(1)第114307号)が作成しています。不動産の実務に関する記述は、当社の宅地建物取引士が確認しています。

財産分与の取り決めは弁護士に、税金は税理士にご確認ください。 最終更新日:2026年9月13日

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