共有名義の家、相手が売却に応じない──「自分の持分だけ売る」という選択肢【民法206条】

離婚の味方|共有名義・持分 共有名義・持分

※当ページには広告リンクが含まれます。

先に結論をお伝えします。

家を丸ごと売るには、共有者全員の同意が必要です(民法251条)。でも、あなたの持分だけなら、相手の同意なしに売れます(民法206条)。相手が話し合いに応じてくれなくても、打つ手がゼロになるわけではありません。ただし持分だけの売却には価格が大きく下がるという現実もあります。私は買取側にいた宅建士として、なぜ下がるのかの内訳まで含めて、この選択肢を正直に解説します。

「離婚することは決まった。家は売るしかない。なのに、相手が判を押してくれない」——共有名義の家で一番つらいのは、自分ひとりでは何も決められないように見えることです。連絡しても返事がない。感情的になって話にならない。弁護士を挟んだら、今度は時間だけが過ぎていく。

でも、実は法律は「何もできない」とは言っていません。この記事では、共有名義の家をめぐる3つの出口と、その中で意外と知られていない「持分だけ売る」という選択肢を、メリットもデメリットも隠さずお伝えします。(離婚と家の全体像は「離婚で家はどうなる?完全ガイド」にまとめています。)

まず大前提:家は「半分こ」できない。でも権利は半分ずつ持っている

共有名義とは、1つの家を「持分2分の1ずつ」のように、割合(権利)で共有している状態です。ここで大事なルールが2つあります。

  • 家を丸ごと売るには、共有者全員の同意が必要(民法251条)。相手が反対する限り、家全体は売れません。
  • ところが、自分の持分だけなら、自分ひとりの判断で売れます(民法206条・持分処分の自由)。相手の同意も、相手への通知も、法律上は不要です。

「え、勝手に売れるの?」と驚かれる方が多いのですが、売れます。あなたの持分は、あなたの財産だからです。これが、話し合いが完全に止まってしまったときの最後の出口になります。

よくある勘違い

「共有名義だから、相手が反対したら何もできない」
→ できます。自分の持分だけなら単独で売却可能です(民法206条)。

「持分だけ買う人なんているわけがない」
→ います。共有持分を専門に買い取る業者が存在します(後述)。

「持分を売れば、家の値段の半分がもらえる」
→ ここが一番の誤解です。持分の価格は「家の半額」よりずっと下がります。理由は次で説明します。

なぜ持分は安くなるのか──買取側の「値付けの内訳」を開示します

【買取側にいた立場から・一次情報】 ここは、買取側にいた人間として正直に書きます。仮に家全体が4,000万円で、あなたの持分が2分の1なら、単純計算では2,000万円のはず。でも、持分買取の提示額はそれよりかなり低くなります。買う側から見ると、こういう引き算をしているからです。

  • 買った業者は「もう一人の共有者」と話し合いをするところから始めなければならない——あなたができなかった交渉を、業者が代わりに引き受ける。時間も費用もかかり、まとまる保証もない
  • 持分だけでは家に住めず、貸せず、担保にもならない——出口が「相手の持分も買い取る」か「相手に売る」か「共有物分割の手続き」に限られる
  • 解決までの保有コスト——固定資産税・管理・場合によっては裁判費用を業者が負担する

つまり、値引き分は「業者が引き受けるリスクと手間の対価」です。安いのには理由がある——逆に言えば、この内訳を知っていれば、複数社の提示額を比べて「妥当か、買い叩きか」を自分で判断できます。1社の言い値で決めないでください。

3つの出口──どの順番で考えるべきか(判断フロー)

出口① 全体を一緒に売る(全員同意)← 手取りは最大。まずこれを目指す
   ↓ 相手が価格に納得しない
出口①' 中立な複数社査定で「共通の物差し」を作って再協議
   ↓ それでも応じない・連絡が取れない
出口② 共有物分割請求(協議→裁判所の手続きへ)← 時間はかかるが法的に決着
   ↓ 時間・費用・関係悪化を避けたい/今すぐ現金化したい
出口③ 自分の持分だけ売却 ← 単独でできる最後の出口

出口①が最善であることは、買取側にいた立場からも断言できます。全体で売る方が、双方の手取りは大きくなります。実際、相手が反対しているように見えて、実は「売ること」ではなく「価格」に納得していないだけ、というケースは非常に多いです。その場合、どちらの味方でもない複数社の査定を並べて「相場の物差し」を作ると、話が動き出すことがあります。感情では揉めても、数字は中立だからです。

出口②の共有物分割請求は、協議がまとまらないときに裁判所に分け方を決めてもらう手続きです(民法256条・258条)。現物で分ける・一方が買い取る・売却して代金を分ける、のいずれかで決着します。法的には確実ですが、時間と費用がかかり、進め方は弁護士の領域です。

出口③の持分売却は、①も②も難しいとき——相手と一切関わりたくない、今すぐ現金化したい、長期戦に耐えられない——ときの現実的な出口です。価格は下がりますが、「共有関係から今すぐ降りられる」こと自体に価値がある状況は、確かに存在します。

持分を売る前に、知っておくべきこと(正直な注意点)

  • 相手との関係は良くならない可能性が高い——あなたの持分を買った業者が、相手と交渉を始めます。相手にとっては「知らない会社が突然共有者になる」わけで、心証は悪くなり得ます。円満な解決を最優先するなら、出口①を粘る価値があります
  • 価格は複数社で比較する——持分買取は相場が見えにくい分、業者間の提示差が大きい領域です。内訳(上の引き算)の説明を求め、説明できない業者は避けてください
  • 住宅ローンが残っている場合は要注意——持分にも抵当権が及んでいるのが通常で、金融機関との関係を無視して売ることはできません。残債がある方は「離婚と住宅ローンの記事」を先にご覧ください
  • 放置は一番損——共有のまま何年も放置すると、相手の持分が差し押さえられたり第三者に売られたりするリスク、将来の相続で共有者がさらに増えるリスクがあります。「いつか話そう」の「いつか」は、たいてい来ません

💡 相手が応じない共有持分は、専門の買取に相談できます[PR]

共有持分を専門に扱う買取業者なら、あなたの持分だけの査定・買取が可能です。「そもそもいくらになるのか」を知るだけでも、出口①の交渉材料になります。相談・査定は無料です。

共有持分の無料査定はこちら

なお、まだ相手との協議の余地があるなら、まず家全体の価値を複数社で把握するのが先です。物差しがあれば、話は前に進みやすくなります。

💡 まず「家全体の今の価値」を知る──無料一括査定[PR]

一度の入力で複数社の査定額を比べられます。中立な数字は、止まった話し合いを動かす材料になります。

不動産の無料一括査定はこちら

次にやること(チェックリスト)

☐ 登記簿で自分の持分割合を確認する(登記事項証明書)
☐ 住宅ローンの残債と名義を確認する
☐ 家全体の相場(複数社の査定)を把握する
☐ まず出口①(全体売却)の再協議を検討。物差し(査定)を材料に
☐ 応じない場合、出口②(弁護士へ)と出口③(持分買取の査定)を並行で比較
☐ 分与や税金の具体的な判断は、弁護士・税理士に確認する

よくある質問(FAQ)

Q. 相手に知られずに持分を売れますか?
法律上、売却に相手の同意や事前通知は不要です(民法206条)。ただし売却後、買主(業者)が相手に連絡を取るため、いずれ知られることにはなります。「黙って売れるか」より「売った後に何が起きるか」まで含めて判断してください。

Q. 持分はいくらぐらいで売れますか?
物件・持分割合・相手の状況によって大きく変わり、一律には言えません。確実なのは「家全体の価格×持分割合」よりは下がる、ということです。下がる理由(業者が引き受けるリスクの内訳)は本文の通りです。複数社の査定で比較してください。

Q. 相続でもらった実家も共有で揉めています。同じ方法が使えますか?
持分売却の仕組み自体は同じですが、相続の共有には遺産分割協議など離婚とは別の手続きが絡みます。相続のケースは姉妹サイト「相続の味方:1人が反対して売れないとき」で詳しく解説しています。

Q. 共有物分割請求をすると、家は売却するしかないのですか?
いいえ。現物分割・一方が代償金を払って取得・競売等による換価分割など、裁判所が事案に応じて決めます。進め方や見通しは弁護士にご相談ください。

この記事の書き手について

不動産買取の現場に長く携わってきた宅地建物取引士。不動産業に15年以上(うち仕入・再生に10年以上)携わり、中古マンション・戸建ての査定・仕入れ・販売までを担当し、離婚に伴う共有名義・持分の案件では、弁護士から査定依頼を受けることも多くあります。現場で見てきた実際を、どちらの側にも立たない立場で解説しています。なお、財産分与・共有物分割など法的な取り決めは弁護士に、税金は税理士にご確認ください。

最終更新日:2026年7月7日(民法206条・251条・256条ほか法令確認済み)

タイトルとURLをコピーしました